エビネ

「乱獲によって最近は激減している」という記述は,いつ頃からだろう.僕が植物の勉強をはじめたころには,既にレッドデータブックもあったし,商店街では土の付いたエビネが売られていたから,かなり前だろう.ただ,そのころは,何でこんなに狂ったように「エビネ・エビネ」ともてはやされるのだろう,と不思議に思っていた.名前も「海老根」なんてパッとしないし・・・.

山の中で咲いているのを見たのは初めてかもしれない.愛でられる理由がようやく理解できた気がする.これは確かにきれいな花だ.そして変異が多い.

ただ,やっぱり山の中で出会う花が一番きれいだしうれしいと思う.植えられた花にレンズを向けても,気持は盛り上がらない.それは仕方ない事だと思う.

山で仕事をする人に聞くと,昔は大きな輪っか状の群生がしばしば見られたという.今はそんな群生に出会うことはまず無いだろう.それでも,今日,小さな群落に出会えたことは嬉しかった.

コバノトネリコ

アオダモとも言う.水に漬けておくと水が青くなるというので,試しに葉と小枝を漬けてみたけど青くはならなかった.枝じゃないとダメなのかなぁ.花弁が非常に細いので,花序はフサフサした感じに見える.野球のバットに最適らしい.

カシワ

ラテン語で「大きな楢」という名前が付けられたカシワ.その名前のとおり,大きな葉を付ける.ドングリも大きい.展葉と同時に開花する.

風媒花なので花は目立たないのだけど,新葉はものすごくきれい.ベルベットで作ったコサージュみたい.でも,カシワを見なければベルベットでこんな色・形のコサージュを作ろうとは思わないと思う.何より,こんなグラデーションのある布を作るだけでもすごい技術だ.ありきたりの言葉だけど,自然はすごい.

ゴヨウアケビ

アケビの実といえば,山で採れる秋の果物の中でも5本の指に入るくらいポピュラーでおいしい.ただ,花は意外と知られていないようで,初めて見た人はほぼ感激する.僕もそうだった.

普通,アケビというと2種類を思い浮かべる.果実が2つに割れるいわゆるアケビと,果実が割れないムベだ.ムベは石アケビ・トキワアケビなどとも呼ばれる.個人的にはムベよりもアケビの方が好きだなぁ.

ところが,果実が割れるアケビにも2種類あって,小葉が5枚のものをアケビ,3枚のものをミツバアケビと呼ぶ.おそらく,この2種の果実は区別せずに食べられている.葉の数が5枚と3枚という違いがあるが,決定的な違いは花で,アケビが淡い紫色をしているのに対し,ミツバアケビは暗紫色.

さらに!アケビとミツバアケビは交雑して,ゴヨウアケビという雑種をつくる.ゴヨウアケビの小葉は3個または5個で,ふちに波状の鋸歯がある(波状鋸歯はミツバアケビの特徴).花はミツバアケビと同じ暗紫色.

こうなってくると,自分が食べているアケビがなんだか解らなくなってくるが,少なくともゴヨウアケビではないはず.ゴヨウアケビは実をつくらないらしい.ということは,秋にここに来ても実は期待できないということか・・・.

アセビ

「馬酔木」と書くように,毒がある.父親に聞いた話では,以前はこの枝を列車の窓から川に投げ込み,下流にある駅で下車して流れてくる魚を捕る人が居たらしい.エゴノキと同じ要領だ.

春先にはきれいな花を付けるが,新芽の芽吹きも負けないくらいに美しい.