イカリソウ

芸北ではトキワイカリソウも見られるけれど,この個体は昨年の葉を残していないのでイカリソウ.葉を開くのとほぼ同時に花を咲かせるが,個体によっては20近くものはなを鈴なりに付けるものもある.花の形がおもしろいので,少ない方が見栄えが良い気がするのだけど,人のために咲かせるわけじゃないからなぁ...

タチツボスミレ

スミレとならんで,日本で最も普通に見られるスミレ.と書いてしまうと簡単だが,タチツボスミレと呼ばれていても,変異がものすごい.遺伝的なものなのか環境からくるものなのかは別として,ちょっと歩くと姿が大きく変わるのだ.これが面白い,という領域に踏み込めたら一流なのだろうけど,僕にとってはなんとも悩ましい.

ここで見たものは,体が大きめで,紫色がきれいだった(写真で再現できるかな?).のり面にもよく群生するので,咲いた時には見事だ.スミレという名前は,音が好いと思う.澄んだ音だけで成る名前.良い名前をもらったものだ.

春の遠足 −アマゴをめぐる生き物のはなし−

美和小学校の児童と一緒に遠足に出かけた.2年前にも同じ遠足に誘って頂いたのだけど,今回も目的地は大暮養魚場.ここでアマゴのつかみ取りをするのだ.もちろん,深いところでは無理なので,ちゃんと浅瀬を作っている.

僕の役割は,道中で動植物のレクチャーをすること.今回も植林地の中を縫う林道を歩いたので,なかなか目をひくものは少なかったのだけど,それでもいくつか花が見られた.ただ,子供達にとっては,途中で見つけたシマヘビの方が興味津々だったようだ.昼寝の最中だったところを捕まえて,胴としっぱの境,排泄口の場所,うろこを見せながらの脊椎動物の進化の話,温度センサーや二股の舌の役割,捕食の話,瞳の形などをざっと話した.まぁ,一番の興味は手触りだったようだけど・・・.子供達が手で触ったり首に巻いたりするのを見て,2年前には近づこうともしなかった先生も,怖々ながら触っていた.いいことだ.

ここまでなら2年前と同じなのだけど,実は,僕が設定した今日のメインは大暮養魚場にある.芸北は,カワシンジュガイという二枚貝の生息南限にあたるのだが,この貝の保全に大暮養魚場が大きく貢献しているのだ.

カワシンジュガイの幼生(グロキジューム)は,アマゴの鰓に寄生するので,アマゴがいなければ個体群は消滅してしまう.農業のための河川改修が進んだ芸北では,河川同士のつながりは分断され,アマゴが健全に生育できるほどの環境はほとんど残っておらず,カワシンジュガイもほとんどの河川で絶滅してしまった.現在は,カワシンジュガイの残された川にアマゴを放流し,カワシンジュガイの個体群の消滅を防いでいるのだ.さらに,カワシンジュガイはアブラボテの産卵先になるので,カワシンジュガイを保護することは,同時にアブラボテを保護することにもつながる.

この遠足で,子供達は芸北に棲む貴重な生き物のこと,生き物同士のつながり,そして,地元の産業が,経済以外の面でも大きな役割を持っていることを知ったはずだ.もちろん,アマゴの味もね:)

アマナ

田んぼの畦に咲く小さなチューリップ. Amana を使うという意見もあるが,Tulipaの方がなんだかうれしいと思う.

日が当たらないと開かないし,咲いている時期は短いしで,なかなかきれいに開いた姿に出会うことは少ない.そもそも,アマナが咲いている畦が少ない.芸北ではわりと見られるけれど・・・.

鱗茎を食用にしたというけど,こんな小さな鱗茎では,掘るのがたいへんだっただろう.それだけ食料を得るのにどりょくしていたということか.すごい.そしてやっぱりかわいい.

ヤドリギ

ずっとずっと見たかった花.これは雄花.図鑑には2〜3月が花期と書いているけど,八幡はもう少し遅いようだ.まだ前年の実がたくさん残っているのに,もう次の準備をはじめている.「冬の間中,実を落とさずにいるのは,鳥散布に有利なのに,何故あまりこうした種が無いのだろう?」という話をした.ミヤマシキミ,ヤブコウジあたりがぱっと思い浮かぶくらいだ.

雌雄別株で,こちらが雌花.花被の中に見える花柱は,小さくて丸くて,かわいい,うれしい.

ネコノメソウ

雪がすっかり無くなって自然館がもうすぐ開く,というころになると,よく電話をいただく.「今,八幡高原に花はありますか?」という質問だ.実はこの質問の「花」には,「写真を撮って画にしやすい」とか「珍しい」という修飾語が暗に含まれている.これはとっても難しい質問なのだ.

僕も写真を撮るから,見たことの無い花やきれいな花に出会った時には,やっぱりカメラを持つ手にキアイが入る.でも,キアイが入りすぎるとレンズを通してしか花を見ていなくて,後で思い返して「観察不足」となってしまうことがよくある.そんな出会い方をした花の印象は,往々にして自分の写真から受けるものだけになってしまい,実際に見た(はず)の花から受けた印象はほとんど無い,ということが少なくない.ナチュラリストと写真愛好家の分岐点は,おそらくこの辺りにあるのだろう.出来上がった写真だけを見て,花や鳥の話しをするようになったらおしまいだなぁ・・・.自戒.

ネコノメソウは,ちょうどこのころ満開になる.満開,といっても,萼片も花も緑〜黄緑〜黄色なので「花咲いた」感は少ない.それでも,湿地の歩道を歩いていると鮮やかな黄緑色の群生に目がとまる.電話への回答に出てくることもない花だけど,好い色だと思う.

タムシバ

雲月山の観察会の後,山を下ったところに咲いていた.「タムシバとコブシの違い」について,いつも話題になるのだけど,一番分かりやすいのは,名前の文字数がコブシの方が一文字少ない.その一文字を,コブシは葉で補う.つまり,花の時に一枚葉を付ける.ただ,花が開くと,タムシバも葉を展開するので,開く寸前の蕾を見るのがポイント.その他にも,タムシバの方が花がすっきりしている,標高の比較的低いところに咲く,早く咲く,などあるが,どれも決め手にはならない.花が終わってからは,葉の裏を見ると区別できる.タムシバは白色を帯びる.

モクレン属( Magnolia は,どれも花がきれいだし,香りも良い.タムシバは名前の音が珍しいと思う.

キジムシロ

草地で普通に見られる花.5〜9個の小葉からなる葉が特徴.ミツバツチグリも同所的に見られるのだけど,ミツバツチグリは匐枝を出すので平面的に広がるが,キジムシロは匐枝を出さないので円くなる.雉筵の名前はこの姿から来ている.

山焼きの日にも咲いていたのだけど,今日も数はあまり増えていなかった.春の黄色い花は,小さいけど,目立つ.

ショウジョウバカマ

山焼き後の黒い土の上に,ぽつんと咲いていた.まだ1週間しか経っていないのに,変化の速さに驚く.葉はほとんどが熱の影響を受けていたが,付け根部分は緑色が残っていた.1週間前には,つぼみも地面にくっついていたのだろう.

いつもはあまりクローズアップされることのないショウジョウバカマだが,この日ばかりは主役だった.