いずれアヤメかカキツバタ

八幡高原を代表する花として,真っ先に挙げられるのがカキツバタです.そして,カキツバタが咲く頃になると,いつも交わされるのが「アヤメとカキツバタの違いは?」という質問です.同じIrisはよく似ていますが,花の時期には容易に見分けられます.

アヤメ,カキツバタ,ノハナショウブの花

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ナツツバキ

ツバキの名があるが,いわゆるツバキ属(Camellia)ではなく,ナツツバキ属(Stewartia)として別の属に分類されている.この仲間は樹皮がなめらかなのが特徴.リョウブに似ている.日本には3種が知られていて,英彦山(高校時代,はじめて植生調査をした山.ブナ林もある)の名を冠するヒコサンヒメシャラ(S. serrata)もこの仲間になる.毎年,「あれれ」と思っているうちに花が終わってしまうのだけど,今年は花の時期に気にかけることができた.花がぽとりと落ちる姿には,ナツツバキという名がとても良く合っていると思う.「紅い椿 白い椿と 落ちにけり」と詠んだのはだれだったか.

ヤマボウシ

今年は特に花付きも良く,遠くからでも真っ白に見えるほど花を付けている個体がたくさんあった.名前も花もカワイイのだけど,葉が隠れるほど真っ白になった個体を見ると,壮絶な思いがする.

植物は葉で光を受けて栄養を合成している.夏の高い気温と強い陽射しは,植物が生長する絶好の季節だ.この時期に,葉を覆ってしまうほどの花を付けるというのは,栄養を摂らずに子孫を残そうとする努力だろう.鳥の中には,抱卵の時期に全く食事を摂らないものもいるが,ヤマボウシが葉をすっかり覆うほどの花を付けるのも同じ事だ.子孫を残すための生物の行動って本当にすごい.同じ意味で,開花時に葉が白くなるマタタビもスゴイなぁ.花をびっしり付けるにしても,エゴノキなんかは下向きに付けるので,光合成に影響はない.ポリネーターへのアピール度は,だんぜん上向きの方が高いだろうけど.

花弁のように見えるのは総苞片で,丸く見えるのが花の集まり.実際の花弁は2mmくらいで非常に小さいので,本当の開花は見過ごされてしまうかもしれない.この個体はまだ花弁も雄しべも付いていた.

葉は対生し,花に先駆けて展葉するが,花期にも開きかけのものも多く見られる.

カキツバタ

八幡高原を有名にしているのは,間違いなくこの花だろう.広島県唯一の自生地で,花期には大勢の観光客が訪れる.ただし,現在見られるカキツバタの群生は,人の手で植えられたものばかりだ.本来の自生地はことごとく改変され,残っているものはほんのわずかしかない.

本来,カキツバタは八幡の至る所で見られ,それこそ水田雑草のように咲いていたという.実際,カキツバタを栽培している方に聞くと,そう弱い花ではないらしい.カキツバタを減少させたのは,圃場整備による水路の改修だ.

最近では,少しずつ変化も起きてきた.カキツバタの里づくりもそうだが,自宅前のちょっとした池にカキツバタを植える人が増えてきたのだ.さらに,上の写真の水田では,ここ数年,毎年カキツバタが咲く.ほんのわずかだが,イネを植えるスペースをカキツバタのために割くいている.田の持ち主の心が伝わる光景だ.

ミドリシジミ

シジミチョウの仲間はゼフィルスと呼ばれ,収集家の間ではちょっと人気らしい.確かに成虫が羽を開くと金属のような光沢を持っていてきれいだ.そうして,やっぱり絶滅危惧種になっている.

ミドリシジミはハンノキを食草にする,というのは知っていたけれど,実際に見たことは無かった.これは,別の蝶の調査をしている方が教えてくれたミドリシジミの幼虫が作った家(と呼んでイイノかな?).ミドリシジミの幼虫は,こうしてハンノキの葉を集めたものを作るらしい.

いくつかの家を開いてみると,その一つに幼虫を見つけた.こんな小さな幼虫が自分の体の何倍もある葉を寄せ集めてくるというのが不思議だ.虫ってつくづく力持ちだなぁ...

ちなみに,この家は定住するためのものではないらしく,食事をする時には別の葉に出かけたり,家を作っておいてまた別の所に移ったりするらしい.実際,いくつか開いた中には幼虫がいない家があった.いや,不在の方が多かった.そんなわけで,この子もまた新しい家を築くことだろう・・・.

ミズキ

わりとよく見かけるし,名前も知られているのに,なかなか注目してもらえない木.枝の伸ばし方が特徴的で,たくさんの花序が同じ高さに並ぶように咲く.若枝が赤いので,展葉の前にも同定しやすい.

注目されない理由は,やはりこの花だろう.展葉が終わってから咲き,しかも一つ一つの花が小さいので華やかさに欠けてしまう.アメリカハナミズキに主役を奪われても仕方が無いとも言える.ただ,小さな花はしっかりとミズキの形をしており(当たり前か?)それを見るとやっぱりカワイイと思ってしまう.