オニフスベ

朝から自宅の庭で車の音がするときは,たいてい何かめずらしいものがやってくる.今朝の来客は島川さんだ.「何かありましたか?」と聞くと,案の定,「これは何かの?」と車の中から大きなモノを取り出す.

オニフスベだ!まだ見たことは無かったけれど,このキノコは間違いない.図鑑で見て,一度見てみたいとずっと思っていたものだ.シイタケのほだ木を放置したところに発生したらしい.持ってきてくださった個体はどちらも直径が約25cm.大きいものは直径が60cmくらいになるそうだから,まだまだ未成熟なのだろう.弾力があるので,今なら食用になるはずだ.

自然館の前に置いて写真を撮ってみた.次は生えているところをを見たいなぁ...

メディアにおける希少種の報道について−2−

結論から書くと,公表・非公表を決めるのは各メディアの製作主体であるべきだと思う.ここの決定権が無くなってしまっては,ジャーナリズムの独自性が保てなくなるので,ここは間違い無いだろう.
一方で,あんどうさんからのご指摘のとおり,メディア独自で「【その後の保全策についての具体的な見通しが立った時】かどうかを判断することができない」というのも事実だろう.「記者個人のモラルや情報リテラシーの問題だ」と言ってしまえばそれまでだが,それでは同じことの繰り返しになってしまう.
理想的な形は「基準に該当する種(たとえばレッドデータブックに掲載されている種)の公開に際しては,関係行政機関(広島県なら県の環境保全室),専門家(レッドデータブックであれば,本に記載)および博物館施設(動物園・植物園・昆虫館・自然館 etc.)の意見を聞く」などのステップを内規として持っておくことだろう.そうすることにより,記事掲載に対する批判が出た場合にも,掲載に至る根拠を示せる.レッドリストに載っている種については,先の三者(特に専門家)に聞くことで,十分な情報を得られるのではないだろうか.
また,これら三者から「掲載を見合わせるべきだ」という意見が出たとしても,メディアの製作主体が「掲載すべきだ」と判断できる材料があれば,記事は掲載されるべきであると考える.同じ「掲載する」という結論に至ったとしても,見合わせるべきだという意見を覆すだけの材料を検討するという点で「意見を聞く」というステップに意味がある.
マスメディアにおけるこのような内規は,人権や個人情報に関わるものではかなり整ったものがあるのだと思うが,様々な取材を受けるかぎりでは,自然に関しては記者や担当者に判断が任されているのではないかという印象を受ける.ここでは自然のことを取り上げて議論しているが,他のことについても,記事掲載に関する姿勢がしっかりしている記者や製作主体ほどコンテンツへの責任意識も明確であるため,取材を受ける側も進んで情報を提供し,結果として良質のコンテンツを提供できるのではないかと思う.このことは,マスメディアだけでなく,ホームページなどで情報公開している個人にも当てはまることだ.
繰り返しになるが,今回の議論の発端になった記事についても,彼個人を批判することだけではなく,今後の予防策についての議論が必要なのだと考る.ただ,大前提として「ジャーナリズムの独自性」は認められるべきだと考えるので,外部からはあくまで意見・提案に留まるべきだろう.

メディアにおける希少種の報道について


「ところで、8日付けの朝刊に○○を出稿しました。18年近く自生地を公開しませんでした。すべての人に内緒にしていたわけではなく、見たいと言われた方の多くは同行しました。公開しないというのは秘密にしているというわけではありません。
 新聞社時代、新聞に掲載したから「クマガイソウ」が盗掘され、消えたと叱られたことがあります。ほかにも希少植物がなくなりました。以来、希少種は公開すれば盗掘されるという恐怖を抱くようになりました。個人的には貴重な花が見つかれば、一緒に見て楽しみたいと思うのです。 ○○の自生地を知ったのは、18年前に芸北の児玉集さんに連れて行ってもらったのが最初です。誰が最初に発見したかも伺いました。
 最初、新聞に公表してはいけないといわれていました。
 当時の異常な山野草ブームと希少性を考えれば、○○は消えていくでしょう。放っておいたわけではありません。自生地関連の行政やわさび栽培をされている方などと話し合い、保護について話し合いました。結論から言えば、公表しないということでした。
 しかし、日当たりが悪くなるといけないので、サワグルミの枝打ちや自生地に生えるシシウドの撤去などを続けてきました。わたしは素人ですから、植物の権威がたくさんおられる西中国山地自然史研究会の方たちの意見を伺ってきました。そして自生地を静かに見守ってきました。
 3年前、あるグループの方たちが「中国山地で○○の自生地を発見。四国・剣山の自生地よりもたくさんある」という記事が中国新聞に載りました。
 今年も7月29日、30日8月5日と3回行ってみました。がれ場ですが、傾斜が毎年ひどくなっていきます。植物学者と話したのですが、底雪崩のような形ですべて流れるかもしれません−という意見もあるのです。今年の花のシーズンが終われば、シシウドやサワグルミの手入れに行かなければならないと話しているところです。
 いつも悩むのは公開すべきかどうかです。良い知恵はないのでしょうか。どなたか教えてください。」
この問いは,紺野昇さんが2006-08-08 02:42のblog記事で発信したものだ.媒体は違うけれども,同じ「自然を紹介する」立場にいる者として,本質的な問いとして受け止め,自分の意見を述べた.ネット上の書き込みに,ハンドルを使わなかったのははじめてかもしれない.
マスメディアやジャーナリズムに欠かすことができないのは,一部の人の利害にとらわれず,どのような権力にも屈しないという精神だ.この基本精神に則り,ジャーナリズムに関して議論すると,「情報を占有したり、否定したり、隠し通したりすることが正しい選択ではない」という紺野さんの言葉は正しい.しかし,はじめの問いは,希少種の情報公開に際して配慮すべきこと,についてではなかっただろうか?blog上での議論がまるで悪者探しのようになってしまったことも残念だが,記事が削除されたこともあって,はじめの命題についての議論が2006-08-09 00:08 より後のコメントでは消えてしまったことが残念だ.
この命題に対する,僕なりの解をもう一度書いておく.「希少種の生息事実(生息地ではない)が一般に認知されるように情報を公開するタイミングは,その後の保全策についての具体的な見通しが立った時だと考える.具体策が無いのであれば,情報の公開は絶滅を加速するだけだ.」
それでは,この解を実行するために欠けていたものは何だろうか?と考える.記者個人,あるいは報道機関に対して,研究者は十分な情報を提供してきただろうか?レッドリストは出ているが,その活用指針は示されているだろうか?指針を示さないまま,記事が掲載された後に記者や報道機関を責めることはできないと思う.ヒューマンエラーを回避するための具体的方法を模索することが必要だと思う.そうでなければ,また同じことが繰り返されてしまう.(本人の自覚は別として)紺野さんの問いの持つ本質的な部分は,ここにあったのではないだろうか.
紙面に記事が載ったことは遺憾だが,そのことを責めても仕方がない.今からやること,できることは,記事が公開されたという前提に立ち,これからの保全策を考え,実行することだ.ただ,自然に関する紺野さんの記事を素直には読めなくなってしまったことは,一読者として本当に残念でならない.

エンレイソウ

春のブナ林床は賑やかだ.スミレサイシンやミヤマカタバミが目立つけれど,エンレイソウを忘れてはいけない.3の倍数からなる姿はとても特徴的.咲いている花が目立たないので盛を見過ごしすこともしばしばあるけれど,今年はきれいに咲いている時に見ることができた.この株は茎も3本で,ユリ科ぶりを徹底していた.

オオミスミソウ

スプリングエフェメラルと呼ばれる花のなかでも,キンポウゲ科はおもしろい.新潟の学会に出席したときに群生を見る事ができた.オオミスミソウは雪割草と呼ばれ,春の訪れを告げる花として慣れ親しまれている.これはピンクに白が入っている個体.

オオミスミソウの花は変化が多い.これはピンクが強い個体.

この個体はごく淡い紅紫色.

一箇所の自生地だけでもこれだけ多様だけど,このほかに紫などもあるらしい.通りがかりに寄った道の駅でも「雪割草展示会」というのをやっていて,花や色の変化に富んだ鉢植えが並んでいた.変異が多い植物は園芸品になりやすい.そして,盗掘も受けやすい.花が咲き始めると嬉しい気持と同時に不安がやってくる.品評会でも銘を持たずに「山どり」と記された鉢が賞を取っていたが,銘など持たぬ株が花を開き,種を付け,子孫を残す健全な自生地に残ってほしいと思う.

引っ越します

いつも当ブログ「花の色は...」にお越し頂きありがとうございます.近ごろは「花」から遠ざかったコンテンツばかりになり「放下著」ばかりが充実することを心苦しく思っていました.

そこで/finの見直しをして,DIARYを無くし旅の空というblogに置き換えました.今後は
   自然系の話 → 花の色は...
   日々の話 → 旅の空
という整理で行こうと思いますので,どうぞよろしくおねがいします.

つまり,放下著が一つのblogになるってことですね.花の色は...は,写真の加工がメンドウだったんですよねー(^-^;>ケータイから投稿したい時もありますしね.では,イッテキマース.

きれいな色

高原の自然館最後の一仕事(カワシンジュガイとアブラボテの放流)のために自然館に行ったら,表でばったり坂井さんに出会った.「あなたに見てもらいたいものがある」と言って持ってきて下さったのがこのお酒.アズキナシを漬けたらしい.見てもらいたいのは酒の味だったらしい.坂井さんは酒を飲まないのだ.小さなガラスの猪口に一口いただくと,香りもよく,味もしっかりと乗っていておいしい!水で薄めてもまたイイ.う〜ん,これはイイ.かき氷にかけてもオイシソウ.「おいしいデス」と伝えると,小瓶に分けて下さった.大切に頂きます.