雪がすっかり無くなって自然館がもうすぐ開く,というころになると,よく電話をいただく.「今,八幡高原に花はありますか?」という質問だ.実はこの質問の「花」には,「写真を撮って画にしやすい」とか「珍しい」という修飾語が暗に含まれている.これはとっても難しい質問なのだ.
僕も写真を撮るから,見たことの無い花やきれいな花に出会った時には,やっぱりカメラを持つ手にキアイが入る.でも,キアイが入りすぎるとレンズを通してしか花を見ていなくて,後で思い返して「観察不足」となってしまうことがよくある.そんな出会い方をした花の印象は,往々にして自分の写真から受けるものだけになってしまい,実際に見た(はず)の花から受けた印象はほとんど無い,ということが少なくない.ナチュラリストと写真愛好家の分岐点は,おそらくこの辺りにあるのだろう.出来上がった写真だけを見て,花や鳥の話しをするようになったらおしまいだなぁ・・・.自戒.
ネコノメソウは,ちょうどこのころ満開になる.満開,といっても,萼片も花も緑〜黄緑〜黄色なので「花咲いた」感は少ない.それでも,湿地の歩道を歩いていると鮮やかな黄緑色の群生に目がとまる.電話への回答に出てくることもない花だけど,好い色だと思う.