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保全 -home- – 芸北 高原の自然館

霧ヶ谷の,草刈りの効果

霧ヶ谷の,草刈りの効果

霧ヶ谷湿原の草刈りエリアも,作業から1ヶ月経ちました.こちらは緑が目立ちます.刈取り&持ち出しを3年間続けているのと,貧栄養な水をまわしているのとで,木本が目立たなくなりました.ノイバラの株はたくさんあります.

今年もトモエソウの芽生えがたくさん,ノハナショウブやユウスゲの株も健在で,夏にはお花畑が見られそうです.春先の草刈りは,農作業としては無かったものですが,「花咲く野草地」を再生する初期段階では有効かも,と思いました.

  1. 低木だけにダメージを与えられる
  2. 夏の刈り取り&持ち出しでは,花を刈ってしまうし,保全対象の草花にダメージがある
  3. 秋の刈り取り&持ち出しでは,種まで持ち出してしまう

ただし,これが有効なのは,外来草本が入っていないことと,保全対象種の種子供給源があることが条件でしょうね.それから,春先は草や木が雪で抑えられて刈りにくいので,いずれは晩秋に作業をするようにした方が効率が良いように思います.試行錯誤.

千町原の,野焼きの効果

千町原の,野焼きの効果

野焼きから1ヶ月経った千町原を通っていると,焼いたススキ原は黒く見えます.他の場所では低木や牧草(ハルガヤ)が芽吹いて緑なのに,このエリアは黒い.理由は以下の二つ.

  1. ススキの芽生えは牧草に比べて遅いので,緑が目立たない
  2. ノイバラなどの低木の冬芽が焼けて芽吹くことができない

特に「2」の方は大事で,ススキ原では燃料(前年のススキ)があるために,1m以下の低木は,ちゃんとダメージを受けるようです.ススキが残っている場所なら,毎年野焼きを続けることで低木を駆逐できるかもしれません.(毎年続ける,というのがナカナカ難しいのですが...)

一方,2メートル程度の低木林になった場所では,野焼きの燃料も無く,あまりダメージを受けないため,しっかり芽吹いています.こうした場所では,伐採を伴う管理が必要なようです.

何事もそうかもしれませんが,火入れもまた,管理を継続することが,管理そのものの労力を下げています.良いスパイラルが残っている場所(近隣では,雲月山,深入山,秋吉台,三瓶など)は,この流れを止めないことが大事ですね.千町原も,早くそこまでたどり着きたいものです...

西中国山地自然史研究会が,広島県初認定のNPOに

西中国山地自然史研究会が,広島県初認定のNPOに

西中国山地自然史研究会が,広島県から初の認定を受けるという快挙を達成しました.どのくらいの快挙かというと,広島県には461のNPO法人がありますが,このうち「認定NPO法人」は3団体しかありません.全国でも,NPO 48,854法人のうち,認定NPOは257と,わずか0.5%です.

認定NPO法人になると

認定NPO法人は,寄附金の受け入れ団体として認められています.寄付というのは個人の自由なので,どこに寄付しても良いのですが,認定NPOの場合,寄付をした人や企業が税金の優遇を受けられるというのが特徴です.個人の場合は所得税の最大25%が控除され,企業の場合は寄付を「損金」に算入できます.

見方を変えてみると,個人や企業の財産を,税金として行政が集めてから公共の事業に使われるのではなく,直接,公共の事業をしている団体に振り分ける仕組みになっています.もちろん税金は公共の事業に使われるのですが,地域に戻ってくるまでに,公務員の給料や,手続きに係る費用もたくさんあります.中間の手続きを省略することで,事業そのものに使うことができる額が大きくなります.

寄付者にとって大きなメリットがもう一つあります.それは,自分のお金の使途を選択することができるという点です.税金を納める時には,税金の使い道を指定することができません.しかし,NPOに寄付をすれば,その使い道は明確です.税金として「何かは分からないけど公共事業」に使われていたお金を,「自然保護活動」や「環境教育」など,目的を明確にできることは,寄付者にとっての大きなメリットだと思います.地域に認定NPOが増えることは,住民・企業・行政の全てにとって良い影響を及ぼすと思います.

認定の取得について

公共事業にとって重要な税金が減るため,控除対象となる団体の認定は,当然ハードルが高くなります.NPO法人の設立は書類を整えれば良いのですが,「認定」を受けるには,主に次の2点について厳格に審査されます.

  1. 寄附金を受けた実績(社会的に認められていること)
  2. 適切な事務の執行(組織の中がきちんとしていること)

この2点をクリアして「認定」を受けた西中国山地自然史研究会は,社会的にも活動が認められており,かつ組織としても信頼できる,と,県からお墨付きを受けたわけです.すごい!

認定までには,理事のみなさんの取組とともに,事務局の方でもたいへんな苦労をされていました(横から見てました). 特に,認定をする側の県職員の方にとっても初めてのことで,慎重に学びながら指示が来るため,事務の方は五月雨式のオーダーに対応しなければならず,苦しかったと思います.心から拍手を送ります.

八幡湿原自然再生事業は第3のステージに進みます

八幡湿原自然再生事業は第3のステージに進みます

2002年のワークショップがきっかけとなり,八幡湿原の自然再生事業は2004年から始まりました.事業の計画を作る第一段階が2006年まで.第二段階の工事とモニタリングは2007年から始まり,今日,その報告がまとめられました.その上で,これまでは一つの湿原を再生することに力を入れてきたのが,これからは八幡にある全ての湿原を対象にしていく,という方向性が合意されました.これは大きなことだと思います.

一つの湿原を再生するだけでもたいへんなことですが,それが全部・・・.そもそも,八幡湿原の全容については,1959年に報告書が出て以来,総合的な調査は成されていません.まずは地図化と湿原カルテ作りからでしょうか.長くてタイヘンで楽しい道のりになりそうです.

Screenshot of www.pref.hiroshima.lg.jp

▲八幡湿原自然再生事業|広島県

Screenshot of www.env.go.jp

▲自然再生推進法|環境省

報告会のフライヤーを配布します

報告会のフライヤーを配布します

町内4箇所を巡る「北広島町自然学術調査報告会」のフライヤーが刷り上がりました.今月の区長文書で配布される予定です. この報告会は,広島でトップクラスの先生たちが,7年間にわたって調査した結果を報告していただくものです.「全部分かりました」とは言えませんが,これまでは様子が分からなかった大朝・豊平・千代田についても,ずいぶん資料が集まりました. まとまった報告会は,しばらくできないでしょうから,この機会にぜひお越し下さい.町内の人へのオススメは「まずは自分の住んでいる地区で講演を聴いて,根掘り葉掘り質問する」「3月2日の芸北でまとめてゆっくり復習する」です. ぜひお越し下さい!

メディアにおける希少種の報道について−2−

結論から書くと,公表・非公表を決めるのは各メディアの製作主体であるべきだと思う.ここの決定権が無くなってしまっては,ジャーナリズムの独自性が保てなくなるので,ここは間違い無いだろう.
一方で,あんどうさんからのご指摘のとおり,メディア独自で「【その後の保全策についての具体的な見通しが立った時】かどうかを判断することができない」というのも事実だろう.「記者個人のモラルや情報リテラシーの問題だ」と言ってしまえばそれまでだが,それでは同じことの繰り返しになってしまう.
理想的な形は「基準に該当する種(たとえばレッドデータブックに掲載されている種)の公開に際しては,関係行政機関(広島県なら県の環境保全室),専門家(レッドデータブックであれば,本に記載)および博物館施設(動物園・植物園・昆虫館・自然館 etc.)の意見を聞く」などのステップを内規として持っておくことだろう.そうすることにより,記事掲載に対する批判が出た場合にも,掲載に至る根拠を示せる.レッドリストに載っている種については,先の三者(特に専門家)に聞くことで,十分な情報を得られるのではないだろうか.
また,これら三者から「掲載を見合わせるべきだ」という意見が出たとしても,メディアの製作主体が「掲載すべきだ」と判断できる材料があれば,記事は掲載されるべきであると考える.同じ「掲載する」という結論に至ったとしても,見合わせるべきだという意見を覆すだけの材料を検討するという点で「意見を聞く」というステップに意味がある.
マスメディアにおけるこのような内規は,人権や個人情報に関わるものではかなり整ったものがあるのだと思うが,様々な取材を受けるかぎりでは,自然に関しては記者や担当者に判断が任されているのではないかという印象を受ける.ここでは自然のことを取り上げて議論しているが,他のことについても,記事掲載に関する姿勢がしっかりしている記者や製作主体ほどコンテンツへの責任意識も明確であるため,取材を受ける側も進んで情報を提供し,結果として良質のコンテンツを提供できるのではないかと思う.このことは,マスメディアだけでなく,ホームページなどで情報公開している個人にも当てはまることだ.
繰り返しになるが,今回の議論の発端になった記事についても,彼個人を批判することだけではなく,今後の予防策についての議論が必要なのだと考る.ただ,大前提として「ジャーナリズムの独自性」は認められるべきだと考えるので,外部からはあくまで意見・提案に留まるべきだろう.

メディアにおける希少種の報道について


「ところで、8日付けの朝刊に○○を出稿しました。18年近く自生地を公開しませんでした。すべての人に内緒にしていたわけではなく、見たいと言われた方の多くは同行しました。公開しないというのは秘密にしているというわけではありません。
 新聞社時代、新聞に掲載したから「クマガイソウ」が盗掘され、消えたと叱られたことがあります。ほかにも希少植物がなくなりました。以来、希少種は公開すれば盗掘されるという恐怖を抱くようになりました。個人的には貴重な花が見つかれば、一緒に見て楽しみたいと思うのです。 ○○の自生地を知ったのは、18年前に芸北の児玉集さんに連れて行ってもらったのが最初です。誰が最初に発見したかも伺いました。
 最初、新聞に公表してはいけないといわれていました。
 当時の異常な山野草ブームと希少性を考えれば、○○は消えていくでしょう。放っておいたわけではありません。自生地関連の行政やわさび栽培をされている方などと話し合い、保護について話し合いました。結論から言えば、公表しないということでした。
 しかし、日当たりが悪くなるといけないので、サワグルミの枝打ちや自生地に生えるシシウドの撤去などを続けてきました。わたしは素人ですから、植物の権威がたくさんおられる西中国山地自然史研究会の方たちの意見を伺ってきました。そして自生地を静かに見守ってきました。
 3年前、あるグループの方たちが「中国山地で○○の自生地を発見。四国・剣山の自生地よりもたくさんある」という記事が中国新聞に載りました。
 今年も7月29日、30日8月5日と3回行ってみました。がれ場ですが、傾斜が毎年ひどくなっていきます。植物学者と話したのですが、底雪崩のような形ですべて流れるかもしれません−という意見もあるのです。今年の花のシーズンが終われば、シシウドやサワグルミの手入れに行かなければならないと話しているところです。
 いつも悩むのは公開すべきかどうかです。良い知恵はないのでしょうか。どなたか教えてください。」
この問いは,紺野昇さんが2006-08-08 02:42のblog記事で発信したものだ.媒体は違うけれども,同じ「自然を紹介する」立場にいる者として,本質的な問いとして受け止め,自分の意見を述べた.ネット上の書き込みに,ハンドルを使わなかったのははじめてかもしれない.
マスメディアやジャーナリズムに欠かすことができないのは,一部の人の利害にとらわれず,どのような権力にも屈しないという精神だ.この基本精神に則り,ジャーナリズムに関して議論すると,「情報を占有したり、否定したり、隠し通したりすることが正しい選択ではない」という紺野さんの言葉は正しい.しかし,はじめの問いは,希少種の情報公開に際して配慮すべきこと,についてではなかっただろうか?blog上での議論がまるで悪者探しのようになってしまったことも残念だが,記事が削除されたこともあって,はじめの命題についての議論が2006-08-09 00:08 より後のコメントでは消えてしまったことが残念だ.
この命題に対する,僕なりの解をもう一度書いておく.「希少種の生息事実(生息地ではない)が一般に認知されるように情報を公開するタイミングは,その後の保全策についての具体的な見通しが立った時だと考える.具体策が無いのであれば,情報の公開は絶滅を加速するだけだ.」
それでは,この解を実行するために欠けていたものは何だろうか?と考える.記者個人,あるいは報道機関に対して,研究者は十分な情報を提供してきただろうか?レッドリストは出ているが,その活用指針は示されているだろうか?指針を示さないまま,記事が掲載された後に記者や報道機関を責めることはできないと思う.ヒューマンエラーを回避するための具体的方法を模索することが必要だと思う.そうでなければ,また同じことが繰り返されてしまう.(本人の自覚は別として)紺野さんの問いの持つ本質的な部分は,ここにあったのではないだろうか.
紙面に記事が載ったことは遺憾だが,そのことを責めても仕方がない.今からやること,できることは,記事が公開されたという前提に立ち,これからの保全策を考え,実行することだ.ただ,自然に関する紺野さんの記事を素直には読めなくなってしまったことは,一読者として本当に残念でならない.

クマ登場

休日だったので工房 ぶなの里でコーヒーを飲んだりハーブティーを飲んだりビールを飲んだりして午後を過ごした.雨が降りそうなお天気だったので他のお客さんは一組だけで,その方達もお昼過ぎ早々に帰って行かれた.ほどなく,坂井さんがやってきてキノコの幼菌を見せてくれた.帰りかけた坂井さんが戻ってくるのと輝子お母さんが叫ぶのが同時だったと思う.「クマ!クマ!」.テラスの向こう,ちょうど僕がハンモックを吊るあたりを若いクマが走っていくのが見えた.アキちゃんが吠えたからクマもびっくりしたのだろう.ニョルさんが言っていたことをそのまま目撃してしまった.

「クマをよく見る」という話はお母さんに聞いていたのだけど,まさか自分が見ることができるとは思っていなかった.いつも15:00過ぎくらいに通過するそうだ.そんな話を聞いていたら「あっ!またじゃ!」という輝子お母さんの声.慌ててケータイを掴んで撮ったのがこの写真.「一日に4頭も見たのははじめて」という.僕も子連れグマを見たのは初めてだ.ガサゴソと藪から出てきて,管理林の中を一目さんに駆け抜けていった.そりゃぁ,これだけ見通しが良ければ長居はしたくないだろうなぁ.クマ防除には奥山保全・里山整備・(集落周りの)草地再生・・・ってどうですかね?かなり的を射ていると思うのですが.

広角いっぱいで花を写すのはヒサビサかもしれない.頭を切られたタンナトリカブト.これが動物とか昆虫とか人だったら目も当てられない写真なんだけど,切り取っていった人はそんなこと考えないんだろうなぁ・・・.

ツルを切る

苅尾の山頂付近を歩いていて,いくつかのつるが切られていることに気付いた.明らかに人の仕業なのだけど,なぜこんなことをするのだろう?遊び半分にしてはたくさんあるし,つるの採取をした形跡も無い.

いろいろ考えたけど,ブナを守るつもりでつるを切ったのではないか,という憶測にたどり着いた.もしそうだとしたら,それはとんでもない勘違いだ.材木の生産を目的としたスギやヒノキの植林ならともかく,ブナ林はブナだけが生えていればよいわけではない.確かにブナはブナ林の優占種だけど,それをとりまく様々な動植物がいて,はじめてブナが生育できるのだ.つるが絡み付いたくらいで枯れるほどブナは弱くない.絡み付いたつると共に生きるはずだ.逆に,つるが絡み付いたくらいで枯れる個体は枯れた方が良い.1本のブナが枯れると,そこには大きな空間(ギャップ)ができる.そうしてできたギャップから,また次の世代の植物たちが伸びていくのだ.

環境を保全しようとする時,特別な生物を守るというのは分かりやすい構図だ.だけど,そこだけを見たのでは,本質的に自然を守ることはできない.目の前だけの事象を見て,短絡的な行動に出ないようにしなければならない.自戒.

山焼きから一ヶ月

東京からお客さんがあったので,明日に予定されている雲月小学校の遠足の下見を兼ねて,雲月山に登ってみた.さすがに山肌は黒から茶色に変わりつつあるが,山肌にはススキをはじめとして,たくさんの新緑が芽吹いていた.しかも,焼いていない場所よりも緑が鮮やかに見える.山肌のせいかもしれないけれど,これは新鮮だった.

山焼きの後,いろんな人が雲月山の興味深い情報をwebで発信されているので,目にとまったページを集めてみた.

■個人のページ

雲月山 山焼きに参加しました。』 by Outdoors in Hiroshima
雲月山焼き』 by 芸北町観光協会
■ 報道関係

雲月山、8年ぶり炎の絵巻 広島県北広島』 by 中国新聞
草地を守る 雲月山の山焼き〜芸北(4/11)』 by 広島ホームテレビ