八幡高原を代表する花として,真っ先に挙げられるのがカキツバタです.そして,カキツバタが咲く頃になると,いつも交わされるのが「アヤメとカキツバタの違いは?」という質問です.同じIrisはよく似ていますが,花の時期には容易に見分けられます.
八幡湿原
八幡湿原と尾瀬ヶ原湿原
八幡湿原の話しをするときには,よく話題にされるのが尾瀬ヶ原湿原のことです.日本人にとって湿原といえば,まず尾崎谷湿原(そして釧路湿原)なんでしょうね.
ここでは,成り立ちと植生から,ふたつの湿原を比べてみたいと思います.
まとめを先に書くとこのような形です.
共通点;
- 川がせき止められたことによる盆地地形に湿原が形成された
- 泥炭の蓄積が認められる
- 大きく見れば同じ植生
相違点;
- 川がせき止められた原因(尾瀬は火山活動,八幡は地質)
- 泥炭の蓄積量(尾瀬は5m,八幡は1m未満)
- 植物相全体で見ると共通していない(共通係数18%)
霧ヶ谷の,草刈りの効果
霧ヶ谷湿原の草刈りエリアも,作業から1ヶ月経ちました.こちらは緑が目立ちます.刈取り&持ち出しを3年間続けているのと,貧栄養な水をまわしているのとで,木本が目立たなくなりました.ノイバラの株はたくさんあります.
今年もトモエソウの芽生えがたくさん,ノハナショウブやユウスゲの株も健在で,夏にはお花畑が見られそうです.春先の草刈りは,農作業としては無かったものですが,「花咲く野草地」を再生する初期段階では有効かも,と思いました.
- 低木だけにダメージを与えられる
- 夏の刈り取り&持ち出しでは,花を刈ってしまうし,保全対象の草花にダメージがある
- 秋の刈り取り&持ち出しでは,種まで持ち出してしまう
ただし,これが有効なのは,外来草本が入っていないことと,保全対象種の種子供給源があることが条件でしょうね.それから,春先は草や木が雪で抑えられて刈りにくいので,いずれは晩秋に作業をするようにした方が効率が良いように思います.試行錯誤.
八幡湿原自然再生事業は第3のステージに進みます
2002年のワークショップがきっかけとなり,八幡湿原の自然再生事業は2004年から始まりました.事業の計画を作る第一段階が2006年まで.第二段階の工事とモニタリングは2007年から始まり,今日,その報告がまとめられました.その上で,これまでは一つの湿原を再生することに力を入れてきたのが,これからは八幡にある全ての湿原を対象にしていく,という方向性が合意されました.これは大きなことだと思います.
一つの湿原を再生するだけでもたいへんなことですが,それが全部・・・.そもそも,八幡湿原の全容については,1959年に報告書が出て以来,総合的な調査は成されていません.まずは地図化と湿原カルテ作りからでしょうか.長くてタイヘンで楽しい道のりになりそうです.