キシツツジ

川べりに咲くからキシツツジ.これも分かりやすい名前だ.しかし,キシツツジが健全な個体群を保てるような河川は少なくなっているのが現状だ.河川護岸のコンクリート化は,かなり上流まで進んでおり,キシツツジが定着できるような「でこぼこして少し土壌がたまる岸辺」という環境はそう多くない.けれども,太田川筋を下っていくと,わりと広く分布していることが分かる.

キシツツジももちろんコバノミツバツツジダイセンミツバツツジホンシャクナゲなどと同じツツジ属(Rhododendron)で,花が大きく見応えがあるので,しばしば園芸種として栽培される.そう,岸だけでなく陸上でも育つのだ.キシツツジが岸辺に多いのは,そこにしか住めないわけではなく,岸辺での個体群維持に必要な種特性を獲得して,他の種との競争を避けた結果と見る方が納得できる.陸上に引き上げて観賞するのも良いが,本来の生活史に沿った個体群に残って欲しい.

ヤマグルマ

崩落して水に浸かりながらも,枝を上に伸ばし,咲いていた.この個体が結実することはないが,花粉が運ばれることでひょっとしたら遺伝子を残せるかもしれない.開花している倒木を見ると,いつもその望みに掛けて咲いているように思う.
ヤマグルマという名を現地で聞いた時にはフムフムと思っただけだったが,実はすごく面白い種だ.通常,被子植物は道管と仮道管を持っているが,ヤマグルマは仮道管しか持たないらしい.それってシダ植物と同じじゃないか!ビックリだ.
名前の由来は,葉が枝先に車輪状に付くから.ヤマグルマ科は1属1種.属名のTrochodendronが車(trochos)と樹木(dendron)を合わせた言葉で,ヤマグルマという和名と共通していたので「!?」と思って調べたら,シーボルトが命名者だった.これってやっぱり和名→学名のパターンじゃないだろうか.

ホンシャクナゲ

山に咲く花を見るとワクワクする.それが珍しい花ならなおさらだ.反対に,庭に植えられた花を見てもあまり心が動かない.それどころか,それが山から取ってこられたことを考えると,なんだか疲れる.どんなものでも楽しみ方は人それぞれだけど,自生地に危害を加える人と相容れることは絶対に無いだろう.

ホンシャクナゲも,人に翻弄された植物だ.コバノミツバツツジダイセンミツバツツジと同じくツツジ属(Rhododendron)なのだけど,葉の様子や花の姿は全く異なる.とにかく豪華な花を付ける.そして葉は力強い.

葉陰になっても,樹形が整っていなくても,山で咲く花を美しいと思う.それを殺める行為はさもしく,愚かで,恥ずべきことだ.

コナラ

ブナにだいぶ遅れて展葉・開花するドングリ.八幡では,標高800m以上あたりからブナが多くなるので,まず山の上が緑になり,標高700mあたり(集落のあたり)が新緑色になるのはその1週間後くらいになる.展葉と同時に開花する.開花といっても,花粉を運ぶのは風まかせの「風媒花」なので,花は目立たない.

この個体は自然館の前に植えられたもので,タマキクラゲが付いていた.タマキクラゲは,残念ながら植毒不明.

ダイセンミツバツツジ

コバノミツバツツジが盛りを過ぎるころ,ダイセンミツバツツジの蕾がおおきく膨らむ.コバノミツバツツジよりも色が濃くて,葉よりも先に花が開くのでよく目立つ・・・と思いきや,ダイセンミツバツツジが咲く頃には他の木が展葉しているので,林を遠目に見て目立つのはやっぱりコバノミツバツツジではないだろうか.

紅紫がとてもきれい.宙に舞っているような蕾・花も好い.

ミヤマガマズミ

林を抜ける道路を通る時にガマズミの仲間の白が増えてくると,いよいよ春が終わりに近づいたのを感じる.ミヤマガマズミは他の種に少しだけ先駆けて咲くような気がする.葉の裏には長い毛があるが,表面はほとんど無毛で,葉の大きなガマズミや起毛のようなコバノガマズミに比べてキリリとして見える.花は割と良い匂いの部類に入ると思うのだけど・・・.

ムラサキケマン

緑色の補色・紅紫色なので,この花が咲いているとよく目立つ.スゴイ色だ.しかも,花をたくさんつけるのでゴチャゴチャした印象を受ける.野原や畑のふちなどで見かける.

ちなみに,華鬘(けまん)とはこれで,寺院のお堂を飾るものらしい.

ウマノアシガタ

田のあぜなどに普通に見られる.キツネノボタンなどもひっくるめて,いわゆるキンポウゲと呼ばれる仲間.たくさんあって,目に付きやすくて,目をとめないうちに種になっていたりする.そのくらい身近な花.

金鳳花という名前の由来どおり,花弁には光沢があって,まるでワックスでもかけているようだ.図鑑には,花弁がデンプン粒を含み,表面にクチクラ層(=キューティクル.ヤブツバキの葉なんかもこの層が発達する)があるから,と書いている.クチクラはともかく,デンプンが含まれると聞くと食べてみたくなる.が,キンポウゲ科の中にはアルカロイドを含むものもあるので要注意・・・.

シュレーゲルアオガエルの卵塊

お昼休み,郵便局に行く途中に卵塊を見つけた.モリアオガエルが木の枝やイネの苗などに卵塊をつくるのに対し,このカエルは土の上や田の土の中に産卵する.都合良く水が張られる場所は少ないだろうから,やっぱり農耕文化に結びついて分布を拡げた種なのだろうか.ため池もそうだし.

卵塊の中の卵が白っぽかったので「無精卵かな?」と思ったが,図鑑で見るとどうやらこのカエルの卵は黄白色らしい.ということは,いずれオタマジャクシになるのだろう.ただ,それまでにはカラス・クサガメ,他のカエルのオタマジャクシなど,天敵がウヨウヨしている.ガンバレ!