川べりに咲くからキシツツジ.これも分かりやすい名前だ.しかし,キシツツジが健全な個体群を保てるような河川は少なくなっているのが現状だ.河川護岸のコンクリート化は,かなり上流まで進んでおり,キシツツジが定着できるような「でこぼこして少し土壌がたまる岸辺」という環境はそう多くない.けれども,太田川筋を下っていくと,わりと広く分布していることが分かる.
キシツツジももちろんコバノミツバツツジ,ダイセンミツバツツジ,ホンシャクナゲなどと同じツツジ属(Rhododendron)で,花が大きく見応えがあるので,しばしば園芸種として栽培される.そう,岸だけでなく陸上でも育つのだ.キシツツジが岸辺に多いのは,そこにしか住めないわけではなく,岸辺での個体群維持に必要な種特性を獲得して,他の種との競争を避けた結果と見る方が納得できる.陸上に引き上げて観賞するのも良いが,本来の生活史に沿った個体群に残って欲しい.