「♪夏が来れば思い出す〜」とはじまる『夏の思い出』は,湿原に対する憧憬を日本人にもたらし,湿原の地位を高めたが,同時に弊害ももたらした.それは,尾瀬をはじめとする東北の高層湿原が湿原のステレオタイプであり,それとは異なる湿原は価値が低いという認識を暗に植え付けたことだ.その結果,各地の湿原にミズバショウが植えられた.ミズバショウは,本来,兵庫県と中部以北に分布するが,今では各地の湿原や親水公園で目にする.正直なところ,植えられたミズバショウは気持ち悪い.花の姿はきれいなのだけど,どうしても「外来植物」として目に映ってしまうのだ.花も僕も不幸な気がする.外部から植物を持ち込まなくても,そこにある自然には歴史があり,価値がある.むしろ,外部から植物を持ち込むことで,生態系の歴史が意味を無くし,価値が無くなることを理解すべきなのではないだろうか.
- イカリソウ(白色花)
- ミヤコアオイ