カンアオイの仲間は江戸時代に多くの品種が見出され,今日でも園芸の1ジャンルとして残っている.葉の模様や花の色,萼片の数などに変異が多いので,亀甲紋,雪白紋,素芯など,多くの品種が作られている.この写真は(たぶん)亀甲紋と呼ばれるタイプ.同所的に生えていても,わずかに見た目が異なる.園芸種になるはずだ.
カンアオイの種はアリ散布で,種子にはエライオソームと呼ばれる脂肪・アミノ酸・糖などを含む付属物が付いている.アリはこのエライオソーム欲しさに種を巣に運び,エライオソームだけを食べて,種子は放置される.こうしてカンアオイは分布を拡大しようとするのだ.ただ,ある試算では1kmを移動するのに1万年かかるというから,この試算が正しければ気の長いはなしだなぁ.試算が正しければ,だけど.エライオソームはカンアオイだけでなく,スミレ,カタクリ,ムラサキケマン,フクジュソウ,ヒメオドリコソウ,カタバミなど,様々な科の植物で見られ,これらの植物を「アリ散布植物」と呼ぶ.
カンアオイ属の花は地面に埋もれたように咲くので,普通は目立たない.その花の変異を楽しむのだから,日本の園芸って奥が深い.花には花弁が無く,3個の肉質の萼片が筒状になっている.花弁が無いのに離弁花というのも不思議な気がするが,それはさておき,カンアオイ属の種を分類するのは,この花がポイントになる.このあたりではサンヨウアオイとミヤコアオイが多いが,サンヨウアオイは萼筒が6陵に膨らんでボコボコして見えるのに対し,ミヤコアオイの萼筒はまるく見える.内面には縦に15個の隆起腺がある.サンヨウアオイの縦の隆起腺は6個.
こちらはほんの2mほど離れたところにあった個体.葉の模様はまったく違うけど,やっぱりミヤコアオイで,花のつくりは同じ.