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まつり – 芸北 高原の自然館
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まつり

冬を迎える前に,八幡では大きなオタノシミがある.八幡の大歳神社で本祭,小祭(新穀感謝祭)の前夜から奉納される神楽だ.この日ばかりは大人も子どもも宮に集まり,朝まで眠らない.いや,眠くなったらその場で眠る.目の前に鬼がやってきても,やっぱり眠る.酒が振る舞われ,煙幕が焚かれ,天蓋からは鬼棒に当たって千切られた紙が落ちてくる.一年に2夜,この田舎に,なんとも異質な空間が現れる.

明治40年頃までは神社と拝殿とが離れていて,そこで薪を焚いて照明にしていたらしい.揺れる炎に照らされた鬼の面は,さぞかし恐ろしかったことだろう.舞と舞の間には,若い連中が「せぎ歌(せぐ=押し合う)」を歌いながら右左へと押し合って騒いだらしい.今は宮の形も変わり,せぎ歌が聞かれることも無くなったが,大人達は酒を酌み交わし,時にはそのまま舞に加わる人もいる.舞台では見られない光景.それが八幡の神楽だ.

現在,八幡の神楽団は二つで,発祥はどちらも江戸時代に遡るらしい.舞には相当の体力を使うので,やはり若い人の姿が多いが,いずれの神楽団も後継者は十分とは言えない.それでも,毛布にくるまって,眠い目をこすりながら必死に神の舞に見入る子供達を見ていると,なんとなくダイジョウブな気になってくる.そう思うと,ダムの建設とともに消失してしまった樽床神楽団はなんとも惜しいことだ.

さて,そんな時,僕はなにをしていたかというと,表で饅頭を焼いていた.燗酒,焼き鳥(=酒のつまみ),おもちゃ(=子ども向け),饅頭(=おみやげ)というのが青年団が出す露天のメニューだ.実家の祭や盆踊りでは,こうした露天は無かったので,ちょっと新鮮に思う.「小遣いを使う商店が無いので,子供達にお金を使う機会を提供することも大切」という古株青年団員の言葉に納得する.神楽同様,青年団も続いて欲しいなぁ...