八幡高原を有名にしているのは,間違いなくこの花だろう.広島県唯一の自生地で,花期には大勢の観光客が訪れる.ただし,現在見られるカキツバタの群生は,人の手で植えられたものばかりだ.本来の自生地はことごとく改変され,残っているものはほんのわずかしかない.
本来,カキツバタは八幡の至る所で見られ,それこそ水田雑草のように咲いていたという.実際,カキツバタを栽培している方に聞くと,そう弱い花ではないらしい.カキツバタを減少させたのは,圃場整備による水路の改修だ.
最近では,少しずつ変化も起きてきた.カキツバタの里づくりもそうだが,自宅前のちょっとした池にカキツバタを植える人が増えてきたのだ.さらに,上の写真の水田では,ここ数年,毎年カキツバタが咲く.ほんのわずかだが,イネを植えるスペースをカキツバタのために割くいている.田の持ち主の心が伝わる光景だ.