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春 -home- – ページ 6 – 芸北 高原の自然館

ダイセンミツバツツジ

コバノミツバツツジが盛りを過ぎるころ,ダイセンミツバツツジの蕾がおおきく膨らむ.コバノミツバツツジよりも色が濃くて,葉よりも先に花が開くのでよく目立つ・・・と思いきや,ダイセンミツバツツジが咲く頃には他の木が展葉しているので,林を遠目に見て目立つのはやっぱりコバノミツバツツジではないだろうか.

紅紫がとてもきれい.宙に舞っているような蕾・花も好い.

ミヤマガマズミ

林を抜ける道路を通る時にガマズミの仲間の白が増えてくると,いよいよ春が終わりに近づいたのを感じる.ミヤマガマズミは他の種に少しだけ先駆けて咲くような気がする.葉の裏には長い毛があるが,表面はほとんど無毛で,葉の大きなガマズミや起毛のようなコバノガマズミに比べてキリリとして見える.花は割と良い匂いの部類に入ると思うのだけど・・・.

ムラサキケマン

緑色の補色・紅紫色なので,この花が咲いているとよく目立つ.スゴイ色だ.しかも,花をたくさんつけるのでゴチャゴチャした印象を受ける.野原や畑のふちなどで見かける.

ちなみに,華鬘(けまん)とはこれで,寺院のお堂を飾るものらしい.

ウマノアシガタ

田のあぜなどに普通に見られる.キツネノボタンなどもひっくるめて,いわゆるキンポウゲと呼ばれる仲間.たくさんあって,目に付きやすくて,目をとめないうちに種になっていたりする.そのくらい身近な花.

金鳳花という名前の由来どおり,花弁には光沢があって,まるでワックスでもかけているようだ.図鑑には,花弁がデンプン粒を含み,表面にクチクラ層(=キューティクル.ヤブツバキの葉なんかもこの層が発達する)があるから,と書いている.クチクラはともかく,デンプンが含まれると聞くと食べてみたくなる.が,キンポウゲ科の中にはアルカロイドを含むものもあるので要注意・・・.

シュレーゲルアオガエルの卵塊

お昼休み,郵便局に行く途中に卵塊を見つけた.モリアオガエルが木の枝やイネの苗などに卵塊をつくるのに対し,このカエルは土の上や田の土の中に産卵する.都合良く水が張られる場所は少ないだろうから,やっぱり農耕文化に結びついて分布を拡げた種なのだろうか.ため池もそうだし.

卵塊の中の卵が白っぽかったので「無精卵かな?」と思ったが,図鑑で見るとどうやらこのカエルの卵は黄白色らしい.ということは,いずれオタマジャクシになるのだろう.ただ,それまでにはカラス・クサガメ,他のカエルのオタマジャクシなど,天敵がウヨウヨしている.ガンバレ!

イカリソウ

焼け跡に沢山咲いていた.どれも個体サイズが小さいのは,長い間上部を覆われていたからだろうか?イカリソウは,冬には葉が枯れるので,山焼時には地上部が無いはずだ.山焼きを続ければ秋の花だけでなく,こうした「山焼き後に地上部が現れて,冬には地下部のみで越冬する」春植物も増えるだろう.焦げたススキや黒い土の上で咲く姿が印象的だった.

カキドオシ

田の畦に咲くところや,花の形はムラサキサギゴケやトキワハゼに似ているが,こちらはシソ科,前2者はゴマノハグサ科.シソ科らしく,茎をこすると臭い.子どもの癇を取る薬に使ったのでカントリソウの名もあるそうだが,垣を通すほど伸びるカキドオシの方が馴染みやすい.薬に使ったことが無いからか...

別の科でも花の形が似てくるのは,同じ働きを持つからで,生物学の分野では「相同器官」という言葉が使われたりする.カキドオシの花弁は,ハチなどがとまりやすいようにできていて,実際,ハチがよくやってくる.花に降り立ったハチは,蜜を吸うためには花のトンネルを潜っていかなければならない.カキドオシの花を横から見ると分かるように,実は,このトンネルは割と長い.しかも,トンネルの天井には雄しべと雌しべがあって,潜り込んだハチに花粉が付くようになっている.こうしてハチに付着した花粉は,次の花に運ばれて雌しべに届く.僕らが見ている花は,長い長い年月をかけて虫との間に作られてきた関係の産物だ.そんなこととは関係なく,春の陽射しは暖かいのだけど...

ザイフリボク

展葉と一緒に開花するけれど,花弁が長いのと新しい葉が垂れ下がるのとで,よく目立つ.明るい葉の色と白っぽい葉裏も,真っ白な花をより引き立たせる.

采振木の名は,花を采(采配=将軍が持ってるフサフサが付いたこれの略)に見立てたものだそうだけど,今となっては慣用句の中でしか采配なんて言葉は使わないので,イメージしにくい.遠目に見ても華やかな木.

ウリカエデ

植物はどれもそうなのだけど,カエデ属(Acer)は特に幾何学的だと思う.対生する枝,そこから出る葉も対生.長枝の両側に小枝を出し,その先の冬芽が二つに割れて,2枚の鱗片の中からは2枚の紅い鱗片葉と2枚の葉,そして花序が出てくる.どちらかというとカエデらしくない葉だけれど,新緑の鮮やかさは変わらない.

ササの一種

「竹は数十年に一度,花を咲かせて枯れる」と聞くと,花を機会は少ないように思うけど,ササは毎年どこかで花を見ることができる.地味な花ではあるけれど,イネ科(Poaceae)の中では大きな部類に入るので,観察する時にも説明しやすい.ぽろぽろと見えているのは葯で,風に乗った花粉はちろりと覗いている羽毛のような雌しべに付く.秋に稔った実はネズミの重要な食料になるそうだ.竹が開花するとパンダが飢え,ササが開花するとネズミが肥える.小さな花に草食動物の一喜一憂が見える.